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「湊人くん…!」
彼女と初めて会話を交わしてから1ヶ月。
僕と彼女は、お互いを名前で呼ぶ仲になっていた。
「これ、ありがとう!すっごくよかったよ…!湊人くんのオススメは外れないね!」
童話以外のものも読んでみたら?と気まぐれ程度に貸した僕の私物の小説を手にして笑う彼女。
大学のラウンジで楽しそうに本を見つめる彼女が、僕の中でいつのまにか“気になる人”から“離れがたい存在”に変わっていた。
僕は、彼女から小説を受け取り口を開く。
「そういえば、この小説、映画になるらしいよ。」
「えっ!」
驚く彼女に、僕はスマホの画面を見せた。
実写の宣伝を見て、彼女は目を丸くする。
「本当だ…、来月公開なんだね…!」
「うん。結構注目されてるみたい。」
画面をスクロールしながらあらすじを小説と照らし合わせていると、彼女が無意識に出たように、ぽつり、と呟いた。
「…みたいなあ…」
「え?」



