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「…ごめんね、来ちゃった。」


弱々しく笑う彼女を、急いで部屋へ引き入れる。

彼女は、何も言わない。

その肌はすっかり冷え切っていて、服はびしょびしょに濡れていた。


「…とりあえず、シャワー浴びて。すぐお風呂沸かすから。」


僕の言葉に、彼女はこくり、と頷く。

予期していない展開に、動揺が抑えきれない。


…ガチャ。


リビングの扉が開き、彼女がおずおずと入ってきた。

僕の用意したシャツに袖を通し、ズボンの裾を巻くって履いている。


「ちゃんと温まった?」


「…うん。」


まつげを伏せた彼女に、優しく声をかける。


「おいで、エラ。」


とことこと歩み寄ってきた彼女は、どこか危うい感じがした。

いつもの彼女の違うことがすぐに分かる。


ふわっ…!


エラの濡れた黒い髪に、彼女の首にかけてあるタオルを優しくかけた。

わしゃわしゃとなるべく丁寧に拭くと、彼女は、ほっ、としたように肩の力を抜く。