あれから、2週間が過ぎた。

連絡もないまま僕はひたすら日々を生きる。

いつも通りの朝が来て、日が落ちる。

そんな毎日だった。

…今日は大学の全休日。

僕は、1人でソファにもたれかかり、分厚い小説を見つめていた。

エラから返された本は、あれから何度見ても変化はなかった。

表紙を開いても、ページをめくってみても、何の変哲も無いただの本。


(…あれは、夢だったんだろうか。)


しかし、エラの空色の瞳が僕の脳裏によぎる。


“…ごめん、湊人くん。…ごめんなさい…!”


別れ際の彼女の言葉が頭の中をぐるぐるした。


「…何なんだよ、一体…」


ぽつり、と呟いた声が、窓の外の雨音にかき消された。

曇天から降り注ぐどしゃ降り。

まるで僕の心の中だ。


(…何で落ち込んでいるんだ、僕は。)


言葉を交わして付き合っていたわけではない。

ただ、彼女と僕がお互いに抱く感情は、同じものだと思っていたのに。

彼女が僕に隠していることは、一度鉄壁の守りが揺らいだだけで姿を消すレベルのものなのだろうか。

マンションの部屋に、僕のため息が広がる。

…と、その時だった。


…ピンポーン。


部屋のチャイムが鳴った。

ぴくり、と体が震える。


(…誰だ?こんな天気の日に…)


気だるいまま、ゆっくりと立ち上がり、インターホンに映し出されたカメラを覗く。

次の瞬間。

僕ははっ!と目を見開いた。


「エラ…?!」