誓約の成約要件は機密事項です

「その男が、君を心から愛していると言ったら? 君は愛していないのに? それを知った途端、君は離れるだろう。君は愛情を返せないことに罪悪感を覚えるはずだ」

「……そんなこと」

「いや、そうなんだ。そうでなければ、自分の愛情を返してくれる人と結婚したいなどとは言うはずがない。君はそういう人だ」

涼磨は、冷たくなった千帆の頬を持ち上げ、鼻先に囁いた。

「君との結婚の成約要件は、本当は条件なんかじゃない。君を愛し、君が愛することなんだ。だったら……僕しかいない。そうだろう?」

「……はい」

頷いた途端に零れた涙は、涼磨のコートに吸い込まれていった。痛いほどに、きつく抱き締められる。

でも、もっと近くにいきたい欲と、それが叶えられる幸せを千帆は知ってしまっていた。

「千帆を愛してる。僕と結婚してくれ」

「はい……私も、涼磨さんを愛しています」

だから、二人は唇で愛を交わす。

視線で言葉で指先で、愛を伝えることを赦し赦されたその夜のよろこびは、一生知らずには切なすぎるものだった。

「全く……君の気持ちは、機密事項なみだ。これからは、隠し事はなしだよ」

「はい。涼磨さんも、秘密はなしですよ」

「当たり前だ。好きだよ、千帆。一生僕の傍に……」

機密事項の開示の代償は、一生の誓約だった。

聖夜が更けていく。

祝福の初雪が、東京を白く染めた。






- 終 -