「いいわねー、赤い薔薇。情熱の薔薇よねー」

「那央、お花好きですもんね」

他の写真もあるのかと訊かれたので、那央にスマートフォンを見せる。

澄み切った冬空のお蔭で、技術のない千帆でも、薔薇はきれいな姿を残してくれた。

「きれいに撮れているわね。あ、これもきれい。広いところなのね。たくさんあるわ」

「はい」

と言っても、あまり記憶にない。よく覚えているのは、二階から見た庭は、結構な広さがあったことくらいだろう。

「でも、千帆ちゃんが赤を選ぶなんて、珍しいんじゃない?」

「そうですか?」

「もっと淡い色の、かわいいお花を選びそう」

言われてみれば、そうかもしれない。

改めて他の写真をめくってみると、淡いピンクやクリーム色の薔薇が、見ていて一番落ち着く気がする。

自分で選んだのに、不思議だ。赤い薔薇を選んだ日曜日の夜は、その写真が一番きれいに見えたのだ。

「たまには、いいんじゃない? 赤い薔薇の花言葉は、愛情、情熱」

自分に足りないものを、選んだのだろうか。

「濃い赤の場合は、内気とか恥ずかしさなんて意味もあるんだよ。千帆ちゃんらしいかな」

「へえ……色が深くなるのに、不思議ですね」

「真紅の花言葉は、『死ぬほど恋焦がれています』だけどね」

頬がひきつりそうになった千帆に向かって、那央は無邪気に微笑んだ。