何かを待つような間の後、涼磨はカップを手に取った。涼磨が同じように自分にも質問してほしいのだと分かっていたが、千帆はあえてそれを口にしなかった。
「僕も、好き嫌いはない」
根負けしたように、涼磨は自分からそう言った。羞恥からか、口元をカップで隠す。
「そうですか」
そっけなく返事しながらも、千帆の心臓はバクバク音を立てていた。
いくらプライベートとはいえ、怒られないだろうか。
小心の千帆は、故意に無礼な振る舞いを、それも年上の上司にしたことなどなかった。
「僕にも、少しは興味を持ってもらえないか」
千帆は、答えない。できるだけ興味を持ちたくないと思っているのだから、肯定できるはずもなかった。
「……まあ、いい」
うつむいてしまった千帆をのぞき込むように、涼磨は少し首を傾けた。
昨日もした仕草だ。癖なのだろうか。
顔を見られたくない千帆は、ますます深くうつむく。
「君は、聞き流していればいい。判断するのは、君だ。僕の気持ちは、変わらない」
「副社長は……」
思い切って顔を上げると、穏やかな眼差しが待っていた。
予想しなかった表情に、胸の奥がざわめく。
「休日なんだから、名前で呼んでほしい。できれば、涼磨と」
「それは……」
「そのくらい譲歩してくれてもいいだろう」
「僕も、好き嫌いはない」
根負けしたように、涼磨は自分からそう言った。羞恥からか、口元をカップで隠す。
「そうですか」
そっけなく返事しながらも、千帆の心臓はバクバク音を立てていた。
いくらプライベートとはいえ、怒られないだろうか。
小心の千帆は、故意に無礼な振る舞いを、それも年上の上司にしたことなどなかった。
「僕にも、少しは興味を持ってもらえないか」
千帆は、答えない。できるだけ興味を持ちたくないと思っているのだから、肯定できるはずもなかった。
「……まあ、いい」
うつむいてしまった千帆をのぞき込むように、涼磨は少し首を傾けた。
昨日もした仕草だ。癖なのだろうか。
顔を見られたくない千帆は、ますます深くうつむく。
「君は、聞き流していればいい。判断するのは、君だ。僕の気持ちは、変わらない」
「副社長は……」
思い切って顔を上げると、穏やかな眼差しが待っていた。
予想しなかった表情に、胸の奥がざわめく。
「休日なんだから、名前で呼んでほしい。できれば、涼磨と」
「それは……」
「そのくらい譲歩してくれてもいいだろう」



