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安くても数千円する高級食器は、一人暮らしの千帆には贅沢品だ。

とはいえ、せっかくそれを輸入する会社に勤めているのだからと、初めてのボーナスでマグカップを一つ買った。それから、毎年一つは、買うようにしている。

「……面接のような話をして、悪かった」

「いえ」

涼磨は、恥じたように顔を背けたが、千帆にしてみれば、個人的な話よりよほど話しやすい。

「そういえば、この前アンティークカップの本を買いました」

「会社に持って来ていただろ」

「見たんですか? 昼休みに買ったんですが、みんなが見たがっていたので、しばらく机の上に出しておいたんです」

「この店にも展示してある。昔は、実際にそれで出してくれたんだが、客が増えたせいか、やめたようだ」

「それで、このお店に?」

涼磨は、それには答えず、テーブルの上で指先を少し揺らした。

「今、フランス・ブルボン朝の映画がやっているな。ああいうのを観てみると面白い」

「随分と評判になっている映画ですね」

「一緒に行くか」

黙ってしまった千帆を、涼磨はしばらく観察した。

それから、促すように長い指先を振る。