「いらっしゃいませ。二名様でしょうか」

「ああ。もし空いているなら、裏庭の見える席を」

「かしこまりました。こちらへどうぞ」

出迎えてくれたのは、イギリスのヒストリカルドラマに出てくるような、クラシックなメイドだ。中は、カフェになっているらしい。写真を撮るのに夢中の若い人もいれば、話し込んでいる年配者もいて、賑わっている。

それでいて、不思議とうるさくは感じない。建物の雰囲気に、その場にいる人々まで支配されているかのようだ。

二人が案内されたのは、二階の窓際の席だった。ハングアウトの窓から外を覗くと、ナチュラルなイングリッシュガーデンが見える。表の厳格さが残る雰囲気とは違い、色とりどりの花が咲いているのが見えた。

「庭は、帰る前に見ることにしよう」

建物に続き、庭にもつい見惚れてしまっていた千帆に、涼磨がメニューを差し出す。ドリンク欄には、紅茶がずらりと並んでいた。

「腹は、すいているか」

「はい。でも、紅茶だけでいいですよ」

「……付き合え」

しばらく観察するように千帆を見ていた涼磨は、アフタヌーンティセットを2人前頼んだ。

間もなく運ばれてきたポットとカップは、イギリスブランドの有名な花柄。三段のアフタヌーンティスタンドに据えられたケーキ皿も、真っ白だが同じブランドのものだ。