常緑樹が多いのか、秋も終わりだというのにもりもりと元気の良い木々の間を抜け、山のてっぺんに出る。そこにあったのは、ジョージアンスタイルの建物だった。
日本の山の中に、立派な洋館があるとは思いもしなかった千帆は、まじまじとその建物を見上げる。窓を見る限り二階建てようのだが、高さはかなりある。レンガ造りの威風堂々とした佇まいで、煙突がついていた。
左右対称に並べられた長方形の窓、真っ白な窓枠、台形の屋根。玄関のアプローチ芝生は枯れ始めていたが、美しく整えられていた。日本でも時々見かける輸入住宅ではなく、イギリスの古いカントリーハウスをミニチュアにして持ってきたような、本格的なものだった。
思わず観察してしまっていた千帆から、ほんの一歩離れただけの距離に、涼磨は立っていた。
「すみません、つい見惚れちゃって」
「好きなだけ見ればいい」
その横顔こそ、いつまでも見ていられそうに整っている。
本気で見惚れそうになって、千帆は慌てて視線を逸らした。
周りには、人が増えてきた。写真だけ撮る人もいれば、建物の中に入っていく人もいるようだ。
あまり動かずにいるのも迷惑だろう。千帆がもう大丈夫だと言うと、涼磨は建物の中へと導いた。
「わ……!」
玄関のドアをくぐれば、思わず声が出る。
シンプルな外観とは対照的な鮮やかなベルベットのファブリック、艶やかなマホガニーの家具、明るい色の壁紙、重厚なシャンデリア。建物の中は、さらにイギリス風で、タイムスリップしたような歴史的な雰囲気だ。



