「まだ若いのに。私の周りみたいに、30歳を目前にして焦るのなら、分からなくもないけど」

那央は29歳。毎月のように結婚式に呼ばれているらしい。

「そろそろと思ってからでは、遅いと考えまして」

千帆は、重々しく宣言した。

というのも、千帆の周囲は、何の因果か良縁に恵まれない人ばかりなのだ。

10歳上の一番上の姉は、結婚相談所に入会したものの、紹介してもらえる人が少なくて、デートすらままならない。お見合いパーティなんかにも参加しているようだが、1年経った今も、誰とも交際には至っていないようだ。

7歳上の姉は、そろそろ結婚を視野に入れたいなと思っていたときに、会社の経営状態が悪化。転職先は、なかなかのブラックで、仕事の多忙さを理由に彼氏にも振られてしまったと言う。

いとこたちも、大方そのような状況だ。20代から30代まで、10人近くいる年頃の親族は、誰も結婚していない。

そんな状況に気づいた母からのアドバイスが、婚活するなら早いに越したことがないということ。

幸い両親は、娘たちに無理に結婚を薦めたりはせず、一人で生きるならそれはそれでいいと言っていてくれている。

でも、千帆自身が結婚したいと思っているのだ。いつかは、自分が育ったような、ささやかで楽しい家族を作って、仲良く暮らしていきたい。

東京で暮らしていると、素敵な独身男女が多くて、そのままずるずるつられてしまいそうだが、もし本当に結婚したいと思っているのであれば、行動あるのみだ。