クールな部長は溺甘旦那様!?

社長も専務も忙しい人だ。そんな上層部の人たちに掛け合って話し合いをしていたから、彼はずっと顔を見せられなかったのだ。早とちりして、離婚したかったからだなんて思いこんでしまった自分が恥ずかしい。本当の理由が聞けたところで私は安堵すると、身体の中の気がすべて抜け出しそうになった。

「それに、影山は君の大事な友達……なんだろ? 償いと言いつつも、顔も見ずにあいつが解雇されたら、君はきっと自分を責め続ける」

私の気持ちを見越した剣持部長の行動に、嗚咽がこぼれそうになって咄嗟に口を押えた。

こんな彼だから、好きになるのをやめられない。好きで好きでたまらない。

「それに、意図しない結婚話を勝手に持ち出された影山に……責める権利は俺にはない」

私と剣持部長の結婚のきっかけは、煩わしい婚約話を持ち掛けられないようにするためだった。そう思うと、剣持部長も彼の気持ちがわからなくもなかったのだろう。

「そして次に、だ」

剣持部長が手にしている離婚届に目を落とした。

「この物騒なものは? 君を尊重して先に尋ねるが、これにサインするつもりなのか?」

そんなわけないじゃないですか!!

そう声を張って言いたかったけれど、私はただ俯いてぶんぶんと首を左右に振ることしかできなかった。

「ならよかった。すでに記載されているから俺が書いたものと思ったかもしれないが、これは兄の字だ」

「……え?」

予想外の言葉に、私が俯いていた顔を上げると剣持部長の目と合う。