「わかった。まずは君の話から聞こう。だいぶ食い違いがあるみたいだ」
その時、一組のカップルが屋内からテラスに出てきたけれど、お互いに真面目な顔で向き合う私たちの雰囲気を察したのか、すぐに中へ戻って行ってしまった。幸いもう私たち以外テラスには誰もいない。
「今日、検査が終わってから剣持部長のお父様の秘書をやられている重森さんという方が病室に来たんです。剣持部長がサインした離婚届を持って……然るべき方と結婚した方が剣持部長のためだと……何度かそう思ってサインしようとしましたけど……できなかった。剣持部長が前に話したいことがあるって言っていたのを思い出して、あの時、離婚の話を切り出すつもりだったんじゃないかなって……そう思ったんです」
緩やかな風がそよいで髪を揺らす。眼鏡をしていない剣持部長の瞳が黒い前髪の隙間からじっとのぞいている。
「ずいぶん話をややこしくしてくれたものだ」
そう言って、剣持部長が深々とため息をついた。
「あの日、俺が話を切り出そうとしていたのはそんな話じゃない。影山のことだ」
「え?」
影山君の話? どういうこと?
その時、一組のカップルが屋内からテラスに出てきたけれど、お互いに真面目な顔で向き合う私たちの雰囲気を察したのか、すぐに中へ戻って行ってしまった。幸いもう私たち以外テラスには誰もいない。
「今日、検査が終わってから剣持部長のお父様の秘書をやられている重森さんという方が病室に来たんです。剣持部長がサインした離婚届を持って……然るべき方と結婚した方が剣持部長のためだと……何度かそう思ってサインしようとしましたけど……できなかった。剣持部長が前に話したいことがあるって言っていたのを思い出して、あの時、離婚の話を切り出すつもりだったんじゃないかなって……そう思ったんです」
緩やかな風がそよいで髪を揺らす。眼鏡をしていない剣持部長の瞳が黒い前髪の隙間からじっとのぞいている。
「ずいぶん話をややこしくしてくれたものだ」
そう言って、剣持部長が深々とため息をついた。
「あの日、俺が話を切り出そうとしていたのはそんな話じゃない。影山のことだ」
「え?」
影山君の話? どういうこと?



