クールな部長は溺甘旦那様!?

彼との出会いは確かに最悪だった。けれど、きっと私は最悪だと思いながら心のどこかで初めから彼に惹かれていたところはあったのかもしれない。ただ、それを認めたくなかっただけで意地になっていた。

剣持部長に会うのが怖い……でも、会いたいよ……。

気持ちが矛盾してどうすることもできない。今までのことが、すべて茶番だったかもしれないと思うと、底知れぬ恐怖に襲われる。

こんな離婚届、ぐちゃぐちゃに丸めて捨ててやりたい。

瞳が再び濡れ始め、その離婚届を手にしたその時だった。傍らで人の気配を感じたと思ったら不思議なことが起こった。

「あっ――」

まるで手品のように、今の今まで目の前にあった離婚届が忽然と消えてしまったのだ。

「莉奈、いったいこれはなんなんだ?」

瞬いていると不意に低い声が頭の上から降ってきて、私はビクリとしてその方を見上げた。怒気を含んだようなその声の主は……。