クールな部長は溺甘旦那様!?

夕日は沈むのが早い。あっという間に空が紺色の夜闇に変わってしまう。こんな綺麗な夕日を寂しくひとりで眺めるよりも、剣持部長と一緒にこの景色を見たかった。

コーヒーが運ばれてきても、なかなかカップに手を伸ばす気になれず、肺の底から息を吐き出した。すると、バッグの中でスマホが鳴っているのに気づき、手に取るとそれは剣持部長からの着信だった。

先ほどから何度も電話がかかってきていて、いい加減電話に出ないと今度こそ怒られそうだ。それに逃げていたって彼とは一度ちゃんと話をしなければ……。そう覚悟して、恐る恐る通話ボタンをタップしてスマホを耳にあてがった。

「もしもし?」

『はぁ、やっと出た。まったく、何度も電話しているのにどうして出ないんだ? というか、今、君はいったいどこにいるんだ? 病院に行ったらすでに退院したと聞いて驚いたぞ、退院は明日じゃなかったのか?』

聞こえてきたのは息を弾ませて切羽詰まったような剣持部長の声だった。どんな時でも冷静沈着な彼にしては珍しく動揺しているのが窺える。