クールな部長は溺甘旦那様!?

剣持部長はクールに「これは本当の結婚のためのリハーサルだ」なんて言うかもしれない。それでも私は本気で彼のことが好きで、失いたくない。そんなふうにしておいて別れるだなんてあんまりだ。すると、顔を歪めて悲痛にくれる私に、重森さんがそっと口を開いた。

「離婚届ですが、私は健太郎様にあなたの署名をもらって受け取るように言い付かっております。そして、代理で提出してくるようにと……ですが――」

重森さんはいったん躊躇ったように口を閉ざしたけれど、再び話を続けた。

「それはあなたに委任しましょう」

「え?」

主人の言いつけを守らなければ、おそらく重森さんは厳しく叱責されるだろう。それなのに、彼は少し表情を和らげて言葉を続けた。

「健太郎様には、私から説明しておきます。すべては莉奈様にお任せしました。と……あぁ、長居してしまいました。すみません、私はこれで失礼いたします」

重森さんは床に置いていた鞄を手に持つと、私に「そのままで結構ですので、お休みください」と言って早々に病室を後にした。

誰もいなくなった病室は、耳が痛くなるくらい静かだった。

私はもう一度手渡された離婚届を眺めた。