「すまない、言いかけておいて……この話はまた改める」

「……わかりました」

何となくサクッと話せるような内容じゃないと感じて、聞きたい気持ちを堪えて食い下がるのをやめた。
もう、ほんとだよ! 言いにくいとか聞いたらなおさら気になるじゃない。
そうは言っても時間は時間だ。開いたドアから患者さんの家族がぽつぽつと帰っていく姿が見える。

「じゃあな」

「はい、あの……優弥さんも気を付けて」

なんだろう、この胸騒ぎ。

私の予感はいつも先走って外れることの方が多いけれど、背を向けて部屋を出ていく剣持部長の後ろ姿に、言いようのない不安が沸き起こるのを感じずにはいられなかった――。