「私と剣持部長にとって、あのコンペは大事なことだったの! もちろん私たちだけじゃない、部署のみんなだって……。同じ営業部として影山君も先方にうちの会社を採用して欲しいって思ってたんじゃないの?」

悪びれた様子もなくしれっとしている彼に、つい思い余って大きな声を出してしまった。
周りの社員がぎょっと驚いて私に注目したけれど、我に返って冷静になる余裕なんてなかった。

「ごめん、松川さん、ちょっと場所変えようか」

すっと影山君が笑顔を消し、真面目な顔になって小声で私に言う。

望むところですとも! こうなったら喧嘩したって言いたいこと言ってやるんだから!

私はメフィーアのコンペのために毎日身を粉にして、試行錯誤しながら企画書を剣持部長と一緒に頑張ったつもりだ。それなのに、あまりにも安易な態度の影山君に腹が立ってしょうがなかった。

一歩間違えれば、予算変更の企画書だって間に合わなかったかもしれないというのに――。