そう思いつつ、私は影山君の姿を探そうとオフィスを見回す。彼のデスクはまだ片付けられていない。ということはしばらくしたらここへ戻ってくるということだ。

「亜美、影山君って何時に戻ってくるか知らない?」

「うーん……直帰はしないって言ってたから、そろそろ戻ってくると思うよ」

「そうなんだ、ありがとう」

しばらくすると、亜美は約束があるからと言ってオフィスを後にした。
私は影山君にどうして二週間前にメフィーアから予算変更の連絡があったのに、コンペの三日前になって連絡してきたのか問いただしたかった。忘れていたのならなおさら怒りたくなる。ヤキモキしながら待っていると、その影山君がオフィスに戻ってきた。

「あ、松川さん、お疲れ様。コンペどうだった?」

そんなふうにいうけれど、なんだかわざとらしくてモヤっとしてしまう。

「うん、三日前に予算変更の連絡されても大成功だったよ」

私も負けじと皮肉交じりに言うと、影山君が一瞬眉間に皺を寄せた。

「まいったな、やっぱり怒ってる? そんな嫌味っぽく言わなくったって……修正するにしろ、三日もあれば充分だったろ?」

人の気も知らないで勝手なことを何食わぬ顔で言ってくる影山君を、私は冗談抜きで鋭く睨んだ。