クールな部長は溺甘旦那様!?

なによあれ、私だってこの状況がいったいなんなのか理解してないっていうのに。

「あの、これはいったいなんの茶番ですか?」

これって完全にナンパとかじゃないよね? 私、なにかに巻き込まれてる?

私の横で去っていった親子にやれやれといったふうにしている彼を睨みつけて言った。

「茶番? あぁ、立派な茶番だったな。助かったよ」

「そうじゃなくて! なんで私が――」

「君みたいな人を探していたんだ、まさか運良くひょっこり現れるなんてな」

わけがわからない。私みたいな人を探していたって? どうして? いったい何のために?
出会った時とは全く違う声音と態度の彼に、私の中で不信感が募っていった。

「女性のひとり客でお人好しそうな人がいたら、婚約者のふりでもしてもらおうと思っていた。けど、同伴者がいたりしてなかなかそういった女性が見つからなくてね、ちょうどいいタイミングで君が現れてくれて、いい虫除けになったよ」

「む、虫除け……?」

なんの集まりか知らないけれど、きっと彼はこういう場で数多くの女性から言い寄られて仕方がないのだろう。それが疎ましくて、私を利用したんだ。釈然としない私をよそに彼は何食わぬ顔をしている。