クールな部長は溺甘旦那様!?

会場を出て左右を見渡してみても、前野さんの姿が見えない。

どこ行ったんだろう? もしかしたらお手洗いかも……。

そう直感した私は一番近くのレストルームを見つけ、そっとドアを開けてみる。

「前野さん!」

やっぱり思った通り彼女はそこにいた。身体を支えるように洗面台に両手をかけ、前のめりになって苦しそうにしていた。

「大丈夫ですか?」

「松川さん……?」

血の気ない顔を緩慢に私に向ける。身体に触るとどうやら熱があるようだ。

「どうかしたんですか? 具合が悪いとか?」

私がそっと前野さんの背に手をあてがう。

「何してるの? まだプレゼンの途中でしょ? 私のことはいいから」

口元に残っている水気をハンカチで拭うと、前野さんがきつい視線を私に向けた。いつもは物腰柔らかな人だけど、具合が悪くて気を遣っている余裕なんてないようだ。