クールな部長は溺甘旦那様!?

紆余曲折ありながらも、とうとうコンペの日がやってきた。
その日は朝から晴天で暖かな日だった。小走りすると、ほんのりと汗ばむような陽気だ。

今日はオフィスでの服装とは違い、清潔感と堅実さを意識して、濃い目のグレーでまとめたパンツスタイルのスーツできめてきた。すっと背筋を伸ばすと気合も入る。

コンペ会場はメフィーアが貸し切った都内ホテルの大広間で行われ、全国からぜひ我が社で、と意気込んだライバル社の社員がこぞって集まると、その熱気に圧倒されてしまう。けれど、大手企業のコンペにしてはいささか人数が少ないような気もした。

ざっと見て全体で五十人くらいだろうか、見渡しながら所定の席につくと、剣持部長が隣に座る。ピンドットストライプの入った少し明るめのネイビーのスーツをパリッと着こなし、ほんのりいつものフレグランスが香る彼は、靴もピカピカで身だしなみも完璧だ。

「以外に少ないですね、もっといるかと思いましたが……」

「おそらく、予算変更後の企画書が間に合わなくて何社かは辞退したのかもしれないな、直前になって参加を辞退するのはよくある話だ」

正面にはプレゼン用の大型プロジェクタースクリーンなどが既に用意されていて、久しぶりのプレゼンの雰囲気にそわそわしてしまう。けれど、そんな私とは逆に、剣持部長はいたって冷静に自分のパソコンを広げてパワーポイントで作成した企画書の見直しをしている。