企画書の制作が一段落すると、私の仕事はいったん落ち着いた。そんな私とは逆に、剣持部長が本格的に忙しくなるのはこれからだ。企画書にあるだけのことをプレゼンしても、コンペでは勝てない。万が一、先方になにか質問されても納得がいくように答えなければならないし、不安を与えるようなことでは信頼関係は築けない。

剣持部長はそのために、資料を見比べたり、発表に必要な情報を集めて今夜もリビングでパソコンと向き合っていた。二十二時頃に帰宅してきた彼だったけれど、ジャケットを脱いでネクタイを外したままの格好で、時折ハァと小さくため息をついて目頭を親指と人差し指で抑え込んでいる。

ただでさえ山のように仕事を抱えているのに、疲労の滲んだ顔を見ていると、いてもたってもいられなくなってしまう。

「あまり根を詰めないでくださいね、なにかお手伝いできることがあったら言ってください。あ、コーヒー淹れますか?」

「あぁ、頼む」

こんなことしかできないなんて、なんだかもどかしいな……。

そんなふうに思いながらコーヒーメーカーの電源を入れてカップを用意する。