「結婚していても、ほかの男に取られるんじゃないかって……馬鹿なことを考えていた」

「え……?」

「みっともない男だろ? 独占欲の強さに自分でも呆れてるくらいだ。だけど、今だけ許してくれ……こうして君を抱きしめることを」

剣持部長は切なげに言葉を吐いて、私の返事も待たずに両腕いっぱいに力強く私を抱きしめた。

私は彼の妻だ。許しを乞う必要なんかないのに、どうしてこんなに苦しげで切なそうな顔をするのかわからない。抱き合うことで行き交う熱に、どうしようもない歯がゆさを感じずにはいられなかった――。