「取材?」

コーヒーを一口飲むと、取材が必要なのか? と言いたげに剣持部長は不思議そうに私を見つめた。

「私の三つ上の姉なんですけど、結婚式の時にやけにティアラ選びに拘ってたんです。だから、実際に花嫁になった人の気持ちを聞いてみたくて、どんな思いでティアラを選んだのか、とか……少しは企画書の参考になるんじゃないかと思って」

「なるほど。消費者側の意見を取り入れるのはいい心がけだ」

剣持部長なら、なんとなくそう言ってくれるような気がした。褒められた気になって気持ちが少し浮かれてしまう。

「その取材はいつだ?」

「それが、まだ返事をもらってなくて……」

勝手に取材をすると決めてしまったけれど、肝心の姉の都合はまだ聞いていない。またひとりで突っ走ってしまった。

「相手の都合がどうかもわからないのにどうするんだ? あまり企画書作りに時間はかけられないぞ」

「たぶん、明日には返事来ると思うんですけど、大丈夫ですよ」

姉はメールの返信に関しては即日ではないことが多々ある。色々と忙しいのもあるけれど、彼女の性格なのだと思う。