クールな部長は溺甘旦那様!?

「いいか、これから誰に話しかけられても“わかりかねます”“検討中です”とか、曖昧な事を言って、なんとかごまかしてくれ」

「え?」

彼の言っている意味がわからない。ぽかんとしていると、ひと組の親子らしき男女が近づいてきた。恰幅のいい白い髭の生えた中年の男性と、その横には綺麗に髪をアップした若くて美人な女性。

「おお、剣持君ここにいたのか、探したよ」

剣持……? この人、剣持って言うんだ。

私の真横で穏やかな笑顔を浮かべて、すくっと姿勢よく立っている彼を盗み見る。