「あの、それって……一緒に住むってことですか?」

「それ以外の話に聞こえたのか?」

ち、ちょっと待って! 剣持部長とひとつ屋根の下って……。

普通、男女が結婚したら一緒に住むのは一般的だ。彼のことは好きだし、妻になったからには、という気持ちもある。けれど、今まで別居していたのにいきなり密着した生活になると思うと困惑してしまう。

「なにぼさっとしてるんだ。ここが会社から目と鼻の先だからといっても、急がないと遅刻だぞ、俺は先に出る」

部屋のドアを開け、肩越しに振り向いた剣持部長がボソリと一言。

「朝食代わりにケーキをいただいた。また作ってくれ。それと……ジンジャークッキーは俺も好きだ」

「え? あ!」

時計を見ると出社時刻まであと十分しかない。けれど、最後に言われた彼の言葉に気を取られてしまう。