クールな部長は溺甘旦那様!?

ガラス張りのエレベーターがグングン上がっていくと、都心の絶景パノラマ夜景が目の前に広がった。間近に東京タワーが見えて、大通りを走る車のヘッドライトが光の数珠のように連なっている。ひしめき合うビルから、まだ仕事をしている人たちのための照明が綺麗に見えた。あくびを噛み殺して耳の鼓膜にかかった不快な圧力を解消すると、

それと同時にエレベーターの扉がポンという電子音とともに開いた。

ラウンジのあるフロアは全体的に薄暗く、落ち着いた大人の雰囲気が漂っていた。フロアの中央には、大きな植え込みの木が天井まで伸びていて、海外の利用客も多いのか、どこからともなく外国語が聞こえてくる。エレベーターから降りて、一歩一歩と歩き出しながら、感嘆のため息をもらしてあたりをぐるっと見回した。

す、すごい! 綺麗! やっぱりここに来てよかった。

あのボーイさんからクーポン券をもらわなかったら、きっと残念な思いをして漫画喫茶にでも行っていたかもしれない。心の中でボーイさんにお礼を言うとラウンジのレセプションへ向かった。

するとその時。すっかり雰囲気にのまれてしまった私は前方からくる人影にまったく気がつかず、どんっと思い切りぶつかってしまった。