クールな部長は溺甘旦那様!?

「じゃあ、私が考え方を改めたら――」

「別れたいって気持ちは変わらないと思うんだ」

追い打ちをかけるように慎一が私の言葉を遮ってポツリという。三年築き上げてきたものがバラバラと音を立てて崩れていくのがわかった。そしてしばらく気まずい沈黙が続き、このままでは埒があかないと思った私が出した答えは――。

「そう、わかった。今週の土日で部屋片付けるよ……だから少し待ってくれる?」

ここは食い下がって、別れたくない! って、言うべきなのかもしれない。でも、一度冷めてしまった彼の熱をもう一度温め直す術がわからなかった。私がそう言うと慎一は、やっぱりその程度の気持ちだったんだ。と言わんばかりにもう一度ため息をついた。

今日は金曜日。プロポーズされてさらにラブ度があがった週末を慎一と過ごすのだとばかり思っていた。さっそく婚約指輪を買いに行って、具体的に式場も見学予約して……そんなふうになにもかも順風満帆にいくって信じていたのに。

「……ごめん、今日はもう帰る」

笑顔になりきれなくていたたまれなくなった私は、いつまでも俯く慎一を置いて席を立った。テーブルの上には、すっかり冷めてしまったほとんど手をつけていないピザやパスタが残っていた。でも、こんな状況では食べ物も喉を通らない。

店員さんに怪訝な顔を向けられながら、私は足早に無言で店を出た。