クールな部長は溺甘旦那様!?

ドキンと胸打つ音が鼓膜にも響く。私は思わずシャキっと背筋を伸ばした。

少しうつむき加減で、ひとことひとこと彼が口を開くたび、その感動的な瞬間に近づいていく。そう思うと、なんだか私までドキドキと緊張してきた。

慎一、嬉しい。ありがとう、結婚しよう。うーん、もっと可愛げがあったほうがいいかな?

心の中で私は先走ってどんな返事がいいかあれこれ言葉を考えていた。それに、いつでも婚姻届を提出できるよう、戸籍謄本だって取り寄せてある。私の方は準備万端だ。
けれど、そんな慎一の口から出たのは思いがけもしないひとことだった。

「僕たち、別れたほうがいいと思うんだ」

「……へ?」