そうしてその後、私はるんるん気分で午後の授業を済ませ、らんらん気分で仕事を片付け、七時を少し回って帰路についた。
で、そこで何かおかしなものを見ることになった。
(……なんだ?おかしい。ちょっと待て)
「おい」
(校門のところにある、あれはなんだ?)
「あー。やっと終わった?」
(なんでこっちにむかって、あれは手なんぞ振ってるんだ?)
「なにしてるんだよおまえ、こんなところで。下校時刻はとっくに過ぎてるぞ」
「なに言ってんのー。仕事でお疲れのカレシ待ってたに決まってんじゃん」
白石淳子はへらへらと当たり前のことを言うような調子で、なんかよくわからないことをほざいてくださりやがった。
つっこんでやりたいところだったが、昼休みに杉田・青田両先生方から貴重なお話を聞かされていた私は「へいそうかい」と適当に受け流し、すたすたと白石の横を素通りして、さっさと帰ることにした。
てくてくと歩く。
そしてなぜか後ろからは、からからと自転車の車輪が空回りする音。
てくてく。
からから。
てくてく。
からから。
私はとうとう耐えきれなくなり振り返る。



