「さく姫様!!もう立派な女性なのですから、もっと慎ましやかにお過ごしください!」


「あら鈴。これでも抑えている方なのよ?」


家の庭にて一羽の小鳥を指に乗せながらいたずらっ子のように笑うのは、齢15になったさく。


没落したとはいえ、貴族は貴族。
一通りの教養を備えたさくは、どこに出しても恥ずかしくはない程度の姫へと成長していた。
ある一部分を除いては。



「さく姫様!!もっとおしとやかに!せっかくの綺麗な髪が絡んでしまいますよ!」


「そしたらお風呂に入って御髪を整えればいいわね!」


「さく姫様…」



美しい黒髪を持っており、母親譲りの可愛らしい顔立ちもあいまって、他の姫と比べても見劣りしない外形であるはずなのに、適齢期である今、未だに求婚が1人も来ない。

その理由はこの姫らしからぬ天真爛漫な性格にあるのではないかと鈴はやきもきしていた。



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