つちかぶりひめ



「兄皇子様は、性格的にやや難ありでね。宮中でも兄皇子様が春宮になるのを阻止しようとする派閥が大きくて、どちらにせよ恐らく次の春宮は弟皇子様だろう。けれど、このままでは弟皇子様の評判は下がるに下がって、最終的に不要とみなされ暗殺されかねない。そのためにも、弟皇子様には堂々と春宮の位について欲しいと思っているんだよ」



暗殺、という言葉にさくは肩を震わせる。
このまま春宮を断り続けたら、十夜は殺されてしまう。

もし本当に、また自分と気兼ねなく話すために位を捨てようとしているのであれば、それだけはやめて欲しい。




死んでしまったら、もう話せないのだから。




さくはぐっと拳を握りしめ、祖母に問うた。


「私は、十夜様にもう一度会ってお話がしたいです。そのためには、彼に会いに行かなければなりません。…不躾なお願いだとは承知しておりますが、お力添えをお願いしても良いでしょうか…?」


先ほどとは打って変わって、さくの瞳には強い意志が宿る。


それを見た祖母は、静かに小さく頷いた。





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