祖母は、宮中の侍女の育成、監督に携わる位に就いているという。
長年勤め上げたその職種により、祖母独特の情報網が宮中内に張り巡らされているようで、宮中内の噂にはとことん敏感であった。
そんな宮中において、最近、急速にある噂が流れ始めた。
それは、兄皇子よりも優秀で時期春宮の位に就くとされている弟皇子が、春宮になるのを免れようと画策しているのだという噂であった。
帝が自ら選任するにも関わらず、与えられる春宮の位を自ら辞退するなどというような行為は、ある意味国家反逆とも言える。
また、そのような誉れ、辞退するようなことは通常だったらありえないのである。
そのため、まさかと思い噂に過ぎないと祖母はその噂を本気にはしていなかった。
「けど、若葉からさく姫の話を聞いて納得したよ。その春宮辞退には、さく姫、あんたが関わっているんだってね」
その言葉に、さくはびくりと肩を震わせた。
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