十夜が部屋から去ってから、ふっと力が抜けるように気を失ったさくは、そのまま数日間熱にうなされていた。


知らない青年に襲われたこと、それが十夜の兄であったこと、さらには十夜たちが皇子であったことを一気に受け、体が耐えきれなかったのだ。

いわゆる知恵熱を出したさくは、ひたすら看病をしてくれる鈴を横に、熱に浮かされながらも物思いにふけっていた。



「さく姫様、体調はよろしいのですか?」


「ありがとう、鈴。心配かけてごめんね」


「いいんですよ。さく姫様が元気になるのならこれぐらい」


冷たい水の入った桶に布を入れ、十分に絞ったそれを、既にさくの額に乗っている布と取り替える。

水が絞られてポタポタと滴る音を聞きながら、さくはポツリポツリと言葉を漏らした。




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