縁談が破談になり、若葉が官長として村の改善を図っている中。


「あの皇子様から直々に若葉を指名した」ということから、若葉の名が貴族たちの間で一気に広まっていた。

推薦をしたのが皇子だけあって、没落貴族であっても軽視出来ないという噂がうまれたのだ。



それ故、当然若葉の姫であるさくの待遇も上がり、縁談も沢山入ってくるのだと思って構えていたものの、何故か縁談は一つも入って来ず、さくはいつも通りの生活を送っていた。


「今日も普通の1日だったね、鈴」

「そうですね、さく姫様が抜け出すのもいつも通りでした」

「あはは、ごめんってば」



笑って誤魔化せば、寝具の準備が終わった鈴は侍女の部屋へと戻っていく。

さくも、もうそろそろ寝ようと横になった所で、外からガサガサと物音が聞こえ、体を起こした。



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