「そういえば、十夜様は宮で働いているのよね??」


「まぁ、そうだけど…」


初めて会った時、十夜たちの牛車が宮の方から出ていたのを思い出してさくは言葉を発する。

「じゃあ、皇子様のお顔とか拝見したことはあるのかしら!?」


さくは、父である若葉を推薦してくれたという皇子様について、どのような人なのか嬉々として尋ねた。


「皇子様…2人いるけど、片方なら見たことあるよ」

「ほんとに!?どんな方なの??やっぱり帝の皇子様だし、お綺麗な方?」


「顔は綺麗だけど、欲深くて自分のことしか考えない奴だよ」

「え、、、」


十夜の言う皇子様は、さっきまでさくが抱いていたような皇子様とは正反対とも言える性格で、驚いて言葉を失う。


そんなさくの姿を見て、十夜は言葉を続けた。


「って、みんな噂してる」

「そんなこと言って、本人に伝わったら大変だよ!」


悪そうに笑った十夜に、さくは小言を漏らす。

「そしたら、村人に優しい皇子様はもう1人の皇子様なのかな??」


「そうかもね」

その言葉に、十夜は興味がなさそうに頷いた。


.