「準備は出来てるかな?」

「はい、お父様」


前々から予定されていた、若葉の選んだ相手たちとの縁談。
没落貴族であるさくたちは、自ら売り出しに行ったとしても、基本高貴な方には見初められない。家柄が低すぎるため、結婚するにおいて相手のメリットがないからだ。
そのため、若葉は没落貴族であっても結婚してくれる、かつ、さくを大切にしてくれそうな貴族の殿方を何人かあたり、今回のような縁談を取り付けたのだ。


かくいうさくも、十夜以外の貴族の殿方とは初めて会うため、緊張していた。


「お初にお目にかかります、若葉の姫…」

最初に入ってきたのは、背は高いものの少しなよっとした殿方。どうやら勉学に秀でているらしく、小難しい話を沢山聞かされ、正直とてもつまらなかった。

2番目に入ってきたのは、丸々とした殿方。食べることが好きで、自身の屋敷にいる料理人の自慢を沢山聞かされた。村人たちが美味しい野菜などを作ってくれているからでもあるのだと話したら鼻で笑われ一蹴され、さくは少し腹が立った。


3番目に入ってきたのは、若葉よりも歳を取っているであろう殿方だった。博識で話す内容はさくを驚かせるようなものばかりだったが、若葉より年上ということが、もやもやとさくの心に引っかかっていた。



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