「ただいま戻ったよ」

「お父様!お帰りなさい!」


昔のように駆け寄って抱きつくことはしないものの、見るからにそわそわと座っているさく。

そんなさくの様子に気付いた若葉は、困ったようにしながらも嬉しそうに微笑んだ。



「今日はね、さく姫に大事な話を持ってきたんだ」

「大事な話…ですか?」


「さく姫ももう、結婚を考える歳だろう?だから、私から見てさくを大切にしてくれそうな殿方を何人か考えたんだ。その人たちと何人か話す機会を設けるから、さく姫もそのつもりで心得ておいてくれるかな?」


「結婚…分かりました。いつでも覚悟は出来ています」

「ありがとう、さく姫…」

ぎゅっとさくを抱きしめる若葉に、さくは目を閉じる。ついに私にも正式に縁談が舞い込んできたのだと、思うのはただそれだけだった。


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