「きっともう解除して中は見られているだろう」
「どうしてそう言い切れるのですか?」
「GPSを辿れないから」
「ん……GPSって何のことですか?」

乙女は首を傾げながらも中を見られたことの方がショックだった。

「綾鷹様! 犯人を捕まえたら死刑にして下さい!」
「仰せのままに。そのためにも鏡邸でのことを詳しく聞かしてくれるかな?」
「話? 何を話せばいいのですか?」

龍弥との約束で彼の話はできない。
警戒しながら乙女が綾鷹に訊く。

「何をって何もかも洗いざらい、隠し事なしで!」

先程までと違う心の奥まで見透かすような鋭い眼が乙女を射貫く。

「あ綾鷹様、こっ怖いです……」
「私に恐怖心を抱くということは、君にやましい気持ちがあるからだ。だろ?」

このお方、まさかエスパー? ダメだ、この眼に逆らえるはずなどない。私にそんな根性はない。私の負けだ……と乙女は項垂れ、心の中で『元チンピラの荒立龍弥、ごめんね!』と口を割る。

「やはりな」
「エッ! 知っていたのですか?」

乙女が驚き問う。

「脱出の協力者が龍弥だとは思っていなかったが、敵の誰かを味方に付けたのだろうとは思っていた」

ほぼ完璧な答え……乙女の口がポカンと開く。

「――綾鷹様って……実は出来る男だったのですね」

乙女が素直に感心すると、深い溜息を吐きながら綾鷹が言う。