「何やってるの!」


 不意に2人は声のほうを向いた。
 そこには1人の看護師が立っていた。




「あ…いえ! ちょっと外の空気を吸いに来たら、偶然この子がいて…。話をしていたら思わず熱が入っちゃって…ねぇ!」

 女性は笑いながらそう言い、今までのことをごまかした。

「…そうなの?」

 不審に満ちた顔で看護師が志音に尋ねた。

 志音は大きなため息をつき、その場を立ち去ろうとした。


「待って! 名前…聞いてなかった。」

 女性は志音に問い掛けた。
 志音は一瞬立ち止まったが、何も言わずにまた歩きだした。


「私、葵(あおい)っていうの! 512号室にいるから…また会おう!」


 志音はもう足を止めることなく、そそくさと屋上を去っていった。