森井くんは不思議そうに首を傾げた。そのことに私は逆に驚いてしまう。


「だ、だから……声」

「なんで」

「え……」

想像とは違う反応だった。森井くんにとって私の声は大した問題ではないのかもしれない。

私が自意識過剰だったのだろうか。だけど、今まで笑われてきた事実がある。



「もしかして、誰かになんか言われた?」


どきりとして、僅かに後ずさる。

できるだけ思い出さないようにして、目の前の森井くんを見つめる。

言われたことを思い出すと、恐怖で頭がいっぱいになってしまう。



「声、ぶりっこしてるみたいって笑われて、いじめられたこと……あるから」

「そういうことか。馬鹿だな」


馬鹿にしないって言ったのに。

そんなことを思っていると、見透かしたように森井くんがため息を吐いて言葉を続ける。



「そいつらが馬鹿だろ。持って生まれたすっげーもんじゃん」