声のことがきっかけで辛いこともたくさんあった。

けれど、弱虫で臆病な私だったから森井くんと話せたことが嬉しくて、いつのまにか恋に落ちていた。



「あと具体的に好きなところあげるなら、すく顔赤くなるとことか、さらっと嬉しいこと言ってくるところとか、笑った顔とか音楽の話が合うところとか」

「あ、あの」

「それと、全部可愛い」


たぶんこれは、からかわれているよね。

私が赤くなると森井くんはおもしろがって、からかってくることも多々ある。



「で、こんなに好きにさせた責任とって」

「責任?」

抱きしめられていた腕が離れて、森井くんと向き合うように座らされた。



「ん」

と短く言って、顎をわずかに動かした。


「えっと……」

どういう意味かわからず困惑していると、頬を両手で掴まれる。

そして、ゆっくりと森井くんの顔が近づいてきた。




「今日は小宮さんから」

「な、なっ」

なにを? なんて言いそうになったけれど、これはきっとそういうことだ。

時々不意打ちで森井くんからされることはあるけれど、自分からしたことはない。



「してくれないの?」

首を傾げた森井くんが上目遣いで見つめてくる。


距離が近いことだけじゃなくて、森井くんの手で固定されていて顔を背けることができない。

あと少しだけ私の顔の位置を動かせば、唇が触れ合ってしまう。