***




今日も教室には森井くんたちはいなかった。カバンも机には置かれていないようなので、教室には一度も来ていないみたいだ。

またチャイムギリギリに来るのかもしれない。

森井くんたちとも話をしなくちゃいけないし、先生とももう一度ちゃんと話したい。

冷えている指先をぎゅっと握りしめる。



人に伝えるっていうのはやっぱり怖い。拒絶された過去の出来事が私の心に侵食していく。

だけど、あの頃とは違うから。

不安や恐怖に心を弱らせちゃだめだ。

強く在りたい。

大事な人たちを守る声をあげられるように、背筋をしゃんと伸ばしていよう。



『堂々と前向いてろよ』

『守りたいものはちゃんと守り抜け』


森井くんの言葉や、リュウくんの言葉が私の心をしっかりと支えてくれる。


大丈夫。話すことが怖くて、下ばかり向いていた私とはもう違う。



「ねー、今生活指導の加藤に森井くんたちが連れて行かれてたんだけど」

「あれじゃない? 例の噂の……」

クラスの女の子たちの話が聞こえてきて慌てて立ち上がる。