「レイラ…、ねぇレイラ、僕達これからどうなるの……?」

深い森の中に2人、人の子がいた。

「わ、わかんないっ…、けど
私がアオを守るから、大丈夫だよ…」


双子の子。
人から生まれた魔女と、人間。
呪われし魔女と人間を誰もが忌み嫌い、森の奥に捨てたのだ。




捨てられたあの日から、2人だけの生活が始まった。
自給自足の生活は10歳の子供には厳しく、二人共痩せている。

それでも必死に家をつくり、知恵を働かせて二人一組で一生懸命生きていた。


「レイラ!回って!」

レイラ「分かってるわっ!」

人は狩りをすることを覚えた。


「アオ、ハーブをちょうだい。」

「どうぞ。」

魔女は魔法を覚えた。

種の違う2人は、一緒に生きていても成長するスピードは違った。

人が20歳になった時、
魔女の見た目はまだ10歳のまま。

双子なのに、生きるスピードが違った2人はその運命を受け入れるように何も言わず暮らしていたそうだ。


「レイラ…、僕にも魔法が使えるかな?」

「ふふ、どうしたのよ。
貴方は人間でしょう?」

人は次第に魔女を見ては悲しい目をするようになった。

姉よりも先に死ぬことは確実だったから。
二人一組でやってきた2人にとって、どちらかが欠けることは半分死ぬも同然。




だから、人はたくさんの手紙を隠すようになった。

はじめは本棚の後ろ。
絨毯の下。
土の中。

あらゆる場所に、何年もかけて魔女へ向けて手紙を残した。

ある夜、流れ星がたくさん流れた。
2人は外に出て星に向かい手を合わせた。

「何を願ったの、レイラ。」

「いつまでもアオと幸せに暮らせるように、よ。

アオは?」


「……秘密だよ、レイラ。
でもレイラの事は大好きだってお星様に言ったんだ。」


「私も。」


人の子……アオは、

「僕が死んでも、レイラが悲しみませんように。
レイラに幸せが訪れますように。」

双子の姉のことを第1に考え、優しい弟は自分の願いを言うでもなく、流れ星に向かって願っていた。


70歳になった頃。
弟、アオの老化は激しいものになっていた。

しだいにレイラは焦り始め、アオに隠れて不老不死の薬を作り出そうとしたのだ。

もちろん研究は失敗。
人が永遠に生きられる薬など、そう簡単に作れるものではない。


密かに研究を始めたレイラを見つけたアオは

「……っ……レイラ…。」


その思いを手紙に込めはじめた。








「ただいまー。……アオー?
どこにいるのー?」

レイラが帰ってみると、いつも出迎えてくれるはずのアオがいない。



「……アオ……?!?!」

嫌な予感がしたレイラはアオの自室を開けた。


「アオ……っ、アオ……!!!!
どうしたの?どこか痛いの?
ねぇっ答えてアオ……!!


お願いだから……っ…!」




享年 82歳
アオは……息絶えた。



不老不死の薬が完成する前にアオは天へと上ってしまった。







「アオ……」

残されたレイラは、ただ1人生きる気力を失くしたように毎晩のように泣き、アオの名を呼んだ。


アオ

アオ

アオ……。


何も出来なかった自分に腹が立ち、
最後を迎えるその時まで一緒にいてやれなかったことに後悔した。



そんなある日、レイラはやっと、アオの手紙を見つけることになる。


「……何だろ、コレ……?」


ソファの下に隠されているように置いてあるのは一枚の紙。



やっと、レイラはアオの手紙を見つけた。

カサッ____


開いてみると、アオの文字が目に入った。

「レイラへ。

おはよう、レイラ。
レイラに手紙を書いてちょうど30通目になります。



きっと貴方がこの手紙を見る時僕は死んでいるよね。


直接言えなくてごめん。


流星群を見た時、レイラに何を願ったか教えなかったよね。僕が願ったのは








「レイラが幸せになれますように。

レイラが涙にくれませんように。

レイラが笑っていられますように。」



欲張りかな。レイラが見たらきっと
自分の願い事にしたらいいのに。
なんて言うかな。

僕達は二人で一つ。
だからきっと僕が死んでしまったら悲しいよね。





でも、いつまでも涙を流さないで。
僕のために悲しまないで。


君の涙は見たくない。
僕達二人で一つなんだから、レイラが涙を流すと僕も泣いてしまう。




だから、もう泣かないで。
笑ってください。
あと、毎日頑張っている君だから……無理しないでたまには休んでよ。






いつまでもレイラを愛するアオより。」



レイラ「っ……アオ……」

間違いなく、アオの直筆だった。


レイラ「……30通目…、手紙さん、出てきて。」

ポウ…。
色んなところが灯り、紙が何千枚も浮かび上がった。















レイラ「アオ……、
私の幸せが…あなたに届きますように。」


たくさんの手紙に囲まれ灯火に照らされながら、







レイラはやっと、笑みをこぼした。