終電を逃して津田の南向きに窓があるその部屋に泊まると、いつも電気を消したその空間に月なのか、街頭なのか、わからないけれど、何かの光で部屋全体が青白くなる。


夜中目を覚ますといっそう、ぼんやり寝ぼけているせいもあって、それはまるで夢のように思えてしまう。




そのようにしてある日、わたしはまた夢みたい、と夜中寝ぼけて目が覚めた。


隣で寝ていたはずの津田がいない、半分めくられた布団のほうはとても冷たかった。


夜中の空気はいつだって張っている気がする。冷たくて、それでこの部屋の青白さは、より際だっているように感じた。


しばらくして津田が青白いそれに照らされながらベットに戻ってきて、起こした? とそう言ったけれど、わたしはぼんやり聞こえた気がしただけで何も答えなかった。


ベットから体を起こすと本棚が南向きの窓の下に置いてあるのが見える。


それさえ青白い。当たり前だけれど。


もう一回、起こした? と津田はわたしに聞いてきたのをううんと言ったような気がした。




4年前、2時間半かけて津田は本当にその日やってきて、大丈夫か。元気出せよ。なんて一つも言わなかった。あとからそれを言うと、そんな余裕がなかったんだ。疲れてたから。そうやって答えたから少し泣きそうになってしまった。


そんなわたしを見てこいつはおかしいのかもしれない、と言ってみせるように津田は怪訝な顔をした。そういうのにわたしは今でも弱い。


おかしくても別にいいけど、わたしはそうやって泣きたいんじゃないのに。といつだって思うのだ。


このベットは以前付き合っていた彼女と一緒にインザルームに行って見つけたと津田から聞いた。


4年もの間、わたしと津田の一緒にいる時間は減ったり増えたりしながら付き合う事は無かったくせにわたしはよく泣いて時々津田も時間をもてあましていたから、この部屋にはそういうのがいろいろ残っている。


たとえば津田とこのベットを買った人がこの上でしたセックスだとか。


喜びとか悲しみとか苦しみも痛さもこの上に何回も何回も重ねたんだろう。


そういうのはきっと良い意味でも悪い意味でも涙が出る。いろいろあって困るほど。


なくちゃ嫌だった。聞いたわけでもなかったのだけれど、そうでなければ嫌だった。