「えっと、それでどこに行くの?」
「あ、それなんだけど、少し歩くけど大丈夫?」
「ん?うん、もちろん」
不思議そうな顔をしながらも頷く彼女に笑いかけて、歩き出す。
歩きながら、ふと気付く。
そういえば、普通に話せてるな。
今までは目が合うだけで、心臓が大変なことになっていたのに。
少なくとも、昨日の朝まではそうだった。
畑中さんと実際に言葉を交わしていることが奇跡だとも思えたのに、この2日ですごい変化だ。
それはきっと、彼女の人柄に惹かれたからなんだろうな。
言い知れない、胸の内で膨らむ何か。
ただ目で追っていただけの時よりも、それはずっと大きくなっていて。
それだけ人を惹きつける魅力がある。
けれども、言動はどこか人を遠ざけるようで、それでいて一方的に突き放すこともしない。


