彼の接吻(キス)は、わたしの嫌いな煙草の味だった。

 でも、流されるがままに生きてきたわたしは、その苦さを飲み込んで、流されるままに彼と寝た。

 気持ち良かったんだと思う。

 それでも、どうにも苦さが残った。初めてだったからだけじゃない。それは、私にずっと沁み込んでいた苦さ。

 苦くて――、それでも今更は泣けないものだった。