「『月が綺麗ですね』」

「ふふっ…
『死んでもいいわ』」





見つめ合いながら笑ってしまう。


まるで世界にはあたし達2人しかいないみたいに静かだ。





「千景は…お月様みたいだね。
あたしが暗いところにいても照らしてくれる。救ってくれる」

「俺が月なら…優愛は太陽かな。
太陽がなければ月が輝けないように、俺も優愛がいないと俺らしくいられない」





こんな会話も、漫画やドラマで見覚えのあるものばかり。


でも、やっぱり感じてしまうものは仕方ない。


漫画やドラマで聞いたことのあるフレーズがあたしの頭の中にあって、それが出てきたのかもしれないけど。

でも今、あたしがちゃんと感じたこと。



聞き覚えのある言葉はあたしの言葉として発される。


千景の言葉として耳に入る。





「ありがとう、千景。
あたしと出会ってくれて」

「そんなのこっちのセリフ。
優愛が俺の元に通い続けてくれたおかげだよ」

「あの時、頑張って良かったかも」

「今度は俺が頑張る番かな」





そんなことに別に順番なんて関係ないのに。





「優愛を大切にすることに対して頑張る、なんておかしいか…
なら、優愛が俺から離れられなくなるように頑張る」

「え〜それってゾッコンってこと?」

「そう。溺れるほどに」





もうとっくになってるよ、そんなの。


頑張んなくたって、もう既に離れられないよ?



冬だから、人肌が恋しいとかそんな一時的な理由じゃなくてね。


千景の隣は暖かくて落ち着くから離れられないの。





これまで、彼の隣にいることで辛いこと…いろいろあった。


好きだから隠したこともあった。



でも結局は千景のことばかり考えて、一緒にいられないことの方が辛かった。




そして、どうして千景と出会ったのか…そんなことを考えたこともあった。


だって、千景が憎んできたその人があたしのお父さんだったんだから。



でも、もしかしたら出会うべくして出会ったんじゃないかって…今ならそう思える。


あたし達の間には"因縁"があったんじゃないかな。


きっと出会う"運命"だったんだ。



いろんな壁を乗り越えたあたし達なら大丈夫。


これからも2人で乗り越えていけるはず。



何か困難にぶち当たったら、その時その時で対処しよう。


気持ちをちゃんと伝え合って。


これまでぶつかってきた壁が、乗り越えた経験がこれからのあたし達を強くしてくれる。


大好きな人と一緒に、隣を並んで歩いていける。


そして…


溺れるほどの愛を受け取って、


溺れるほどに愛していこう。



貴方のことが昔も今もこれから先も…ずっとずっと大好きだから。





「愛してるよ、優愛」

「うん…あたしも愛してる」





あたしの隣に千景がいてくれるだけで、世界はきっとこれからも輝き続ける。



一生に一度の、出逢えた奇跡を大切にしながら──



【溺れるほどに愛してあげる】Fin...