「『月が綺麗ですね』」
「ふふっ…
『死んでもいいわ』」
見つめ合いながら笑ってしまう。
まるで世界にはあたし達2人しかいないみたいに静かだ。
「千景は…お月様みたいだね。
あたしが暗いところにいても照らしてくれる。救ってくれる」
「俺が月なら…優愛は太陽かな。
太陽がなければ月が輝けないように、俺も優愛がいないと俺らしくいられない」
こんな会話も、漫画やドラマで見覚えのあるものばかり。
でも、やっぱり感じてしまうものは仕方ない。
漫画やドラマで聞いたことのあるフレーズがあたしの頭の中にあって、それが出てきたのかもしれないけど。
でも今、あたしがちゃんと感じたこと。
聞き覚えのある言葉はあたしの言葉として発される。
千景の言葉として耳に入る。
「ありがとう、千景。
あたしと出会ってくれて」
「そんなのこっちのセリフ。
優愛が俺の元に通い続けてくれたおかげだよ」
「あの時、頑張って良かったかも」
「今度は俺が頑張る番かな」
そんなことに別に順番なんて関係ないのに。
「優愛を大切にすることに対して頑張る、なんておかしいか…
なら、優愛が俺から離れられなくなるように頑張る」
「え〜それってゾッコンってこと?」
「そう。溺れるほどに」
もうとっくになってるよ、そんなの。
頑張んなくたって、もう既に離れられないよ?
冬だから、人肌が恋しいとかそんな一時的な理由じゃなくてね。
千景の隣は暖かくて落ち着くから離れられないの。
*
これまで、彼の隣にいることで辛いこと…いろいろあった。
好きだから隠したこともあった。
でも結局は千景のことばかり考えて、一緒にいられないことの方が辛かった。
そして、どうして千景と出会ったのか…そんなことを考えたこともあった。
だって、千景が憎んできたその人があたしのお父さんだったんだから。
でも、もしかしたら出会うべくして出会ったんじゃないかって…今ならそう思える。
あたし達の間には"因縁"があったんじゃないかな。
きっと出会う"運命"だったんだ。
いろんな壁を乗り越えたあたし達なら大丈夫。
これからも2人で乗り越えていけるはず。
何か困難にぶち当たったら、その時その時で対処しよう。
気持ちをちゃんと伝え合って。
これまでぶつかってきた壁が、乗り越えた経験がこれからのあたし達を強くしてくれる。
大好きな人と一緒に、隣を並んで歩いていける。
そして…
溺れるほどの愛を受け取って、
溺れるほどに愛していこう。
貴方のことが昔も今もこれから先も…ずっとずっと大好きだから。
「愛してるよ、優愛」
「うん…あたしも愛してる」
あたしの隣に千景がいてくれるだけで、世界はきっとこれからも輝き続ける。
一生に一度の、出逢えた奇跡を大切にしながら──
【溺れるほどに愛してあげる】Fin...