「‥‥は?」

「今日私、脱獄しようと思うの。これもあなたの運よ。脱獄したいならついて来なさい。」

ズバズバとしていて、シュトラーフェの意見を聞こうともせず、ものを言うハウラの姿にシュトラーフェは苛立ちを覚えた。

「知らねぇヤツの言いなりになりたくねぇし、その上から目線な言い方ムカつく。つーか、お前誰だよ。」

ハウラは言い方を言われるのには慣れていた。幼少期、父、母と共に裕福な家庭に恵まれ、このマルファイエではかなり有名な令嬢だった。少し人使いが荒いことなんて今更気にすることではない。

「私の名前はハウラ・クリミナル。」

「‥‥。」

シュトラーフェは一瞬黙った。けれど、すぐにニヤッとした笑を浮かべた。

「ふぅーん。お前、有名な脱獄犯だったよな?ラジオで聞いたことがある。」

「有名な犯罪者に知ってもらえてるなんて、光栄ね。」

「ま、別に、俺はお前の力を足りずともここからでられるが、手助けが必要みてぇだし、仕方なくこの俺が!一緒に脱獄してやろう。」

「何を言ってるの?私はついて来なさいと言ったはずよ?一緒になんて嫌よ。」

「‥‥!!!あーっ、そうかよ!勝手に付いてくよ!」

噛み合わない歯車が音を立てて回り始めた。今にも噛み合わない部品が飛んでいきそうな勢いで。