「警官に会うたびぶっ倒れてるわ、肝心なところに立ってねーわ、どーなんてんだよ。この刑務所。」

「さっきの声といい、この警官の有様。私たちの他に脱走者がいると考えた方が自然かもね。」

「おいおいマジかよ。一気に犯罪者が3人も街に解き放たれるとか怖すぎねーか?」

「犯罪者のあなたが何を言ってるの?」

「ま、それもそーだな‥‥。」

そんな話をしていると、2人は知らないうちにこの刑務所、最大の難関所。5メートルは余裕にあるであろうほどの高い壁の前まで来た。

「‥‥どーすっかなー。これ。」

「こ、ここまで高いとは想定外だわ。なるほどね。ここの警備が甘いのは、この壁を超える者がいないから。そうっぽいわね。」

「お前、なんか策ねーのか?」

「さすがの私もこれに関しては策はないわ。自力でよじ登るしか無理よ。」

「そんなんでよく脱獄犯やってんのな」

「あなた、ただ私が脱獄犯なだけだと思ってるでしょ」

「はぁ?それがどうした。」

「身体能力。舐めないでほしいわ‥‥ね!」

そういって、ハウラは軽々とそばにあった建物の換気扇に手をかけた。そして、換気扇を掴み、そのまま体を一回転し、さらに高い所へと登っていく。

「‥‥は?」

その光景にシュトラーフェでさへ止まって見入ってしまうほど綺麗な登り方で、身体能力の高いことが聞かなくとも見ればわかる。

「シュトラーフェ、なにをしてるの?」

ハウラがシュトラーフェに声をかけると、ハッとしたように我に返る。そして、ニヤッと笑い、こう言った。

「お前のそーゆーとこ。いいんじゃねーの」